第9章 過去
何分、何時間経ったんだろう?
時間の感覚がない。
ノイズが聞こえない。
感じるのは先生の声だけ。
深く深く潜っていくようだった。
『階段があります。それを一歩ずつゆっくり降りて下さい』
指示に従いゆっくりと暗い階段を降りる。
『階段を下りたら、右と左にドアがあります。左のドアを開けましょう』
階段を降り終えると広場があった。
見渡すと右と左に扉がある。
『ドアを開けたら中に入りましょう』
そこからは無意識だった。
『何が見えますか?』
目に映ったのは悟さん。
違う。
悟さんだけど、違う悟さんだ。
悟さんと小さく虹色に光る私が見えた。
私を手の中に入れて、悟さんは微笑む。
私は悟さんに懐いているようだ。
幼少期の違う悟さんと一緒に遊んでいる。
徐々に月日が流れ。
彼が大きくなるにつれ、私も大きくなった。
共に成長しているようだ。
五条家の御屋敷の池で遊んでいると。
突然、悟さんじゃない誰かに捕まってしまう。