第37章 略奪
翌日。
蓮と心を五条家に預けて、私は沖縄に来た。
もうテレパシー役の蓮と心はいないから。
悟さんと会話することはできない。
チャーターして貰ったヘリコプターで海の上にいる。
無謀かもしれないけど、私を呪ってくれてるなら。
可能性はあるかもしれない。
「悟さん。私を呪って」
私は獄門疆を抱いて海へ飛び降りた。
“ドボンッ”と海に沈む。
目を開けると澄み切った青い海の中にいた。
揺れる海藻の茂みで、魚たちが泳いでいる。
獄門疆。
お願い。
永遠の命なんかいらない。
来世で悟さんに会えなくてもいい。
だから、どうか。
その呪いと引き換えに、悟さんを獄門疆から出して。
そう願うと、海水が嵐のように回る。
急なことに驚いて、ゴブッと水を飲む。
やっぱり私たちの愛じゃ呪いは解けないの?
ふと蘇る記憶。
「愛してる」
(私も愛してる)
「何年経っても、また君を見つける」
(待ってる)
「この瞳を覚えておいて」
(覚えていたい)
「また来世で」
呪いのように私を縛る言葉が浮かんだ。
ふと海面に影が見えて。
“彼”が私のところへ来てくれる。
いつもそう。
そうやって、貴方は私の元へ来てくれるの。