第37章 略奪
ゴブッと水を吐き出した。
「げほっ!ごぷっ!げほっ!げほっ!…はぁっ…はぁっ…」
「君、大丈夫?」
背中を摩られて、何とか息を整える。
気がつくと、砂浜にいて。
後ろを振り返ると、愛しい悟さんがいた。
「はぁっ…君は何を考えてるんだよ…」
悟さんは呆れたように私を怒る。
でも、その左目は以前の青さがなくなっていて。
灰色になっていた。
「悟さんっ!目がっ!」
涙が溢れた。
「ああ。無理矢理、獄門疆から出てきたからね。左目は失明したみたいだ」
何でそんなに淡々と話すの?
「折角、解放されたのに…」
「僕の方が泣きたいよ。ところで君。誰?」
「えっ?」
心臓が“どくんっ”と嫌な音を立てる。
「僕を助けてくれたのは感謝してるけど。明らかに一般人だよね?」
「悟さん。記憶…なくしたの?」
「えっ?知り合い?」
私を助けるために、無理矢理出てきて。
その代償に記憶を失った?
左目まで。
「悟さん」
「何?」
「着いてきて」
私は悟さんの手を掴んで歩きだした。