第35章 休暇⑧
真鶴岬に来た。
こんなに綺麗な海は沖縄以来だなぁ。
悟さんと手を繋いで散策する。
適当に座れる場所を見つけて。
2人で寄り添うように座った。
綺麗な海をみて思い出す。
あの中には魚が泳いでいたり。
海藻が揺らいでいたりするんだよね。
「ねえ?私が海に帰りたいって、言ったらどうする?」
「うーん。そうさせないように呪うかな?」
「私を呪うの?」
「うん。愛ほど強い呪いなんてないんだよ」
呪うほど愛されて、私は幸せなのかな?
「呪いに対抗する手段はないの?」
「呪いには呪いでしか対抗できないよ」
「そっか。私は悟さんを呪えるのかな?」
「どうだろうね」
悟さんを愛することは出来るけど。
呪うのは難しいんだろうな。
「呪いって何なんだろう?」
「辛酸、後悔、恥辱、人が生む負の感情は呪いと化すんだ」
「私はそんな感情持ちたくないな」
「でもさ、稀に強すぎる愛が呪いに変わるんだよ」
そうだね。
悟さんが私を呪ってくれなかったから。
私は今、こうして愛しい人の隣にいなかったよね。
大好きな悟さんと、こうして海を見ているだけで。
私は幸せなの。