第35章 休暇⑧
side.五条悟
車を飛ばして実家へ向かう。
僕は名前に黙っていたことがある。
彼女を不安にさせないようにしていたけど、話した方がいいかな?
「名前」
「何?」
「だいぶ前になるんだけどさ。僕、未登録の特級呪霊2体に奇襲をかけられたんだよね」
「えっ!?」
「ああ。でも大丈夫。当然、蹴散らしたよ」
「そっか」
「ただ、あの時逃がさなければ…」
バンドルを持つ手にギリッと力が入る。
「悠二がさ、宿儺の指を食べてちゃってから。そういう強いのが、ぞろぞろ出てきてるんだよね」
「…そうなんだ…」
「まあ、僕にかかれば雑魚だけど」
名前に出会う前に起きた。
新宿・京都の百鬼夜行。
あの時、傑は憂太を殺して。
特級過呪怨霊“祈本里香”を手に入れようと撹乱した。
僕の親友だった傑は、呪詛師になってしまったんだ。
考えたくないけれど。
今回も身近に、呪詛師あるいは呪霊と通じてるヤツがいるかもしれないね。
僕の予想だと、傑みたいな呪詛師だろうけど。
「僕を獄門疆に封印すれば、悪いヤツは勝てると思ってるんじゃない?」
「そうなの?」
「何せ僕は特級呪術師だからね」
「封印されると…どうなるの?」
名前を不安にさせたくなくて話したけど。
余計に怖がらせちゃったかな?