第35章 休暇⑧
「嫌…嫌、嫌…」
「落ち着いて。大丈夫だから」
お願いだから、現実にならないで。
私から離れないで。
今は悟さんを感じていられるけれど。
この温もりを失ってしまうの?
どんなに強く抱きしめられても。
脳裏に焼き付いた記憶が消えない。
「名前。大丈夫。大丈夫だから。ゆっくりでいいから話して?」
言葉にするのも恐ろしい。
「…お願い…お願いだから…居なくならないで…」
「うん。分かった。分かったからさ。視たこと話せる?」
私はゴクリと固唾を飲むんで、首を縦に振った。
「…四角い箱に…飲み込まれてた…」
「僕が?」
コクコクと頷く。
「それは多分、獄門疆だね」
「獄門…何?」
悟さんはそれを知ってるの?
「封印する代物って言えば、分かりやすいかな?」
「嫌っ!封印なんかされないでっ!」
「大丈夫だよ」
悟さんは笑うけれど、怖いよ。
私には悟さんを守る力がない。
それが今どこにあって、なんのために使われるのかも知らない。
私は無知だから。