第4章 婚約
「悟。戻ったのか?」
「父さん。久しぶり」
「あなた。悟さんがご縁談の女性を連れてきたわよ」
お父さんまで出て来ちゃったし。
もう五条家に嫁げないよ。
「悟…。その…とりあえずよく来たな」
「うん。今日は彼女を紹介しようと思ってさ」
「だったら、その…一先ず…彼女を下ろしてやってはどうだ?」
お父さん!
もっと言って!
「えー?だって逃げようとするんだもん」
「しかしなぁ…彼女は犬猫ではないんだぞ?」
その通り。
私も流石にこの体制も疲れてきた。
「旦那様、奥様。お茶の準備ができました」
「ああ。ではそちらで話を聞こう」
「そうですね」
「坊ちゃまもお嬢様もどうぞ」
「ありがとう」
場所は変わって五条家のお茶の間と思われる所に通された。
向かいには悟さんのご両親が座っている。
「じゃあ改めて紹介します。僕の婚約者の苗字名前さんです」
顔に熱が集中する。
こんなにも恥ずかしい思いをしているのは、全部悟さんのせいだ。