第32章 休暇7日目①*
悟さんがそこまで執着する理由が分からない。
愛してるだけで、そこまで思うかな?
「悟さん」
「うん?」
「私はそこまで弱くないよ?」
人間の命は儚くて、前世の私みたいに永遠の命なんてないけど。
「本当にそうなのかな?」
悟さんは私の首に擦り寄る。
やっぱり不安だったんだね。
「そうだよ」
私は後ろにいる悟さんに向き直って、彼の頬に手を添える。
そして自分の額を悟さんの額にコツンとぶつけた。
悟さんは有り余る力を持っているから。
きっと人間を弱いと思ってるんだよね。
その通りだと思うよ。
でも、その弱さこそが儚くて美しいの。
花火みたい弾けて散っていく。
それが人間の良さ。
きっと過去の私は死ななくて。
イルカの群れと泳いだり。
飛魚のアーチを見た時も美しいと感じてたよ。
でも人はそれを誰かと共有したいと願うから。
私の散り際まで、私の隣は悟さんでいて欲しいと思う。
「ずっと側にいてくれる?」
「いるよ。例え私が人間じゃなくなってもね」
だってこんなに愛しいもの。