第32章 休暇7日目①*
空には満月が輝いていて、とても満ちた時間だった。
綺麗な月を見ながら、大好きな人抱きしめられて。
気持ちのいい温泉に浸かる。
「悟さん」
「うん?」
「そんなに私が好きなの?」
ただの道案内で機嫌が悪くなる程。
「そうだね。江戸時代から今でも君に恋してるんだもん」
「悟さんは、私の全てを手に入れてるのに?」
こう言っちゃなんだけど。
悟さんの手から逃れられないように、十分束縛されてると思う。
「僕は君の全てを手に入れてないよ」
「えっ?」
本当にそう思ってるの?
「だって、どう頑張ったって君は名前じゃないか。僕は1つに融合されたいよ」
「そこまで固執するほど、私は特別じゃないよ?」
残念だけど、大富豪でもないし。
韓国人のようなナイスバディでもなれば、飛び抜けて美人でもない。
「僕にとっては特別だよ。どんなに愛の言葉を並べても足りないんだ。名前には伝わらない」
「うーん…」
悟さんの気持ちが分からず、首を傾げてしまう。
なんかメンヘラ工場長になった気分。