第4章 婚約
「悟さん。不動産屋さんが…」
「あ。ごめん、ごめん。ここに決めたよ」
「ありがとうございます。ではご契約を_」
「それは僕の代理人に任せるから、ここに電話してくれる?」
「畏まりました」
名刺を渡す悟さん。
さすがお坊ちゃま。
そんな人まで雇ってるんだ。
「じゃあ、行こうか」
「うん」
悟さんに手を引かれて、マンションを出る。
すると外に黒塗りの車が待っていた。
「はい。乗って」
「あっ、うん」
促されるまま車に乗る。
「出して」
悟さんが指示すると、運転手さんはまるで目的地が分かっているかのように走り出した。
「どこ行くの?」
「んー?内緒♡」
またか。
悟さんの秘め事にはろくな事がない。
「名前。少し時間あるから寝ていいよ」
「うん。ありがとう」
ここ数日の疲れのせいか、直ぐに眠気が襲ってくる。
悟さんに凭れ掛かるようにして眠りに落ちた。