第4章 婚約
「…だって…私…あまり経験なくて…」
悟さんは私の両手首を抑えると、チュッと触れるだけのキスをする。
顔に熱が集中するのが分かった。
「少しずつでいいからさ。僕に慣れてよ」
「…善処します…」
今度は頬にキスをする悟さん。
こんなの慣れる日が来るのかな?
「ところで今日のフライトは何時なの?」
「15時だよ?」
「じゃあ早めにチェックアウトして、本土でショッビングしようか」
「いいけど何買うの?」
「内緒♡」
胡散臭い笑顔が気になる。
「それより名前。お腹ぺこぺこなんじゃない?昨日、何も食べずに寝ちゃったでしょ?」
確かにお腹が空いている。
私達は身支度を整えると、チェックアウトを済ませた。
そして昨日のラウンジに向かう。
朝食の脇に添えてあるハイビスカス。
ワンポイントで可愛い。
持って帰れないかな?
ジーッと花を見ていると、悟さんがそれを手に取った。
そして私の耳元にハイビスカスを飾る。
「えっ?」
「欲しかったんでしょ?似合ってるよ」
頬杖をついて、優しい眼差しで私を見る悟さん。
なんか心を見透かされてる気分。
「ありがとう」
「うん」
照れていると、悟さんは赤くなった私の頬を撫でた。
そこで徐ろに気づく。
昨晩、あの夢を見なかった…
きっと悟さんに会えて、約束が果たされたから。
呪いが解けたような気がした。