第16章 不穏*
「それで?名前ちゃんは安心してくれたかな?」
「…うん…」
「そっか。そっか。心配かけてごめんねー」
そんな風にへらへらして。
私の気持ちなんか知らないでしょ。
不安だったんだよ?
皆、怪我してここに来るし。
もし悟さんの身に何か遭ったらって。
考えたら腹立ってきた。
「名前?」
何も言わないでいると、私の顔を悟さんが覗きこんでくる。
反射的にプイッと顔を背けた。
「名前」
「………」
「名前ちゃーん?」
そんなに何回も呼ばないでよ。
「………怖かった…」
ぽろりと本音を吐いてしまう。
私の身体を抱きしめながら、悟さんは宥めるように頭を撫でてくる。
「安心して。僕、最強だから。名前を残して死なないよ?」
どれくらい最強なの?
私には分からないよ。
「…絶対に死なないなら許す…」
「ははっ。僕、名前には負けちゃうなぁ」
困ったように笑う顔を見て、漸く安堵する。