第16章 不穏*
「あ、そうだ」
「ん?どうしたの?」
「先に謝っておく。ごめんね?」
「うん。どうしたの?」
「これ」
メスで切った指を見せると、悟さんの顔が無なる。
怖いんだけど…
何か言って?
「………硝子。何で名前は指切ったの?」
「加茂と真希の治癒に自分の血を使ったんだ」
「へぇ…」
目が笑ってない。
怖い。
居た堪れなくて、俯いてしまう。
「硝子。ちょっと名前に説教してくる」
「えっ?」
「分かった。でもあまり苛めてやるなよ」
「それは出来そうにないなぁ」
「悟さん。ごめんなさい…」
「言い訳は後で聞くよ」
悟さんに手首を掴まれて、医務室を出る。
「待って!蓮がっ…」
「蓮なら硝子がみてくれるよ」
「でも…」
「いいから」
めちゃくちゃ怒ってる。
掴まれた手首が痛い。
爪立ててる?
握力も半端ない。
痕が残りそうな程に強く掴まれて、半ば強引に宿舎に連れて来られた。
部屋の中入ると、勢いよくベッドに放り投げられる。