第16章 不穏*
軽症の野薔薇や、真衣ちゃんの手当てをしていると、また医務室のドアが開いた。
「おっつー!」
何事もなかったかのように、悟さんが医務室に入ってくる。
手当てが止まってしまう。
「あっ…ごめん…」
「いいわよ。心配だったんでしょ?」
「そうよ。私はかすり傷だし。自分で何とかするわよ」
私を気遣ってくれてるのが分かる。
「ありがとう。途中になっちゃってごめんね」
「別にいいわよ」
私は悟さんの近くに寄ると、手をキュッと握った。
生徒さんの手前、これくらいしかできない。
「ん?どうしたの?僕のこと心配だった?」
「…うん…」
「えっ…名前が…デレたっ!やだっ!もう可愛い過ぎるっ!」
悟さんは私を抱きしめて、擦り擦りしてくる。
子供じゃないんだから、やめてよ!
「こらぁっ!見せつけんなっ!」
「気色悪い」
酷い言われようだけど。
いつもの悟さんの言動に、酷く安心する。
無事だったんだね。