第14章 出産
side.五条悟
名前の胸に耳を当ててみるが、心音は聞こえない。
僕はまた君を失ったのか?
涙が零れた。
その瞬間、“トクン”と心臓が小さな音を立てる。
「名前?」
腹部の切り傷を見ると、みるみる再生していく。
「名前っ!名前っ!」
頬をペチペチと叩くと、名前は薄らと目を覚ました。
「名前っ!」
「…泣いて…るの?…」
「君が…泣かせたんだよ」
「死なないって…言ったのに…」
弱々しくふにゃりと笑う名前を見て、泣きながら僕も笑った。
「そうだね」
君という愛を見つけてから、僕の人生は喜びと驚きの毎日だよ。
まさかこの僕が、こんな風に泣く日がくるなんて。
「もう傷は塞がったみたいだね。痛いところは?」
「…ないけど…えっ?…あれ?赤ちゃんはっ!?」
「帝王切開で硝子が取り上げてくれたんだ」
「無事なの!?」
気が急く名前を抱き上げる。
「会いに行こう」