第14章 出産
暫くすると控えめなノックの音が聞こえた。
硝子さんを訪ねる方はとても多い。
任務や授業のせいで呪いを受けたり、傷を負ったりする呪術師が出入りする場所だしね。
本来、私のような妊婦がいていい場所ではない。
「家入さんいますか?」
「いるよ」
扉を開けたのは伊地知さんと野薔薇だった。
「あっ!伊地知さんと野薔薇だ。こんにちは」
ベッドからよっと手を挙げて挨拶する。
「こんにちは。名前さん(今日もここは癒される)」
「やっほー!名前さん」
「野薔薇、また怪我?」
「パンダ先輩に派手にやられた」
「ありゃりゃ」
以前、この高専来た時にすれ違った怖い男の子は亡くなったらしい。
野薔薇は顔には出さないけれど、友達だったからきっと辛いのを原動力に特訓してるんだと思う。
後から聞いたことだけど、彼は非常に善良な子だったようだ。
恵くんを助けるために“宿儺”という呪いの“指”を身体に摂り込んだ。
結果、呪いが呪肉して、私は無意識にあの子を恐怖と感じとった。