第13章 懐妊
悟さんの顔が悲痛に満ちている。
「君は俺の妻だろっ!?俺を残して死ぬなんてことは許さないっ!」
「…そんな…大袈裟な…」
「俺はっ!もうあんな思いっ、二度としたくないんだよっ!」
怒鳴られた事に呆然としてしまう。
こんなに取り乱す悟さんを初めて見た。
すると硝子さんが立ちあがって悟さんの頬に“パンッ”と平手打ちをする。
「頭を冷やせ」
悟さんは医務室を飛び出しまい。
私は取り残された。
涙が頬を伝う。
「名前。大丈夫か?」
「………はい…」
「五条はお前を失うことを恐れてあんなことを言ったんだ。許してやれ」
「…はい…」
「お前は赤ん坊のことだけ考えていろ」
要するに私が死産するかもしれないってわけだよね?
道理で悟さんが声を荒げるわけだ。
「私は死にません」
「それは五条に言ってやれ」
悟さんに以前聞いたことがある。
『私がいなくなった時…泣いた?』
『…そりゃね…こんなに愛してるもん』
あの時も、酷く悲しい顔をしてた。
悟さんに辛い思いをさせてるのは分かってる。
それでも私は赤ちゃんを諦めることなんてできない。