第13章 懐妊
ちょうど点滴が終わる頃、医務室のドアが開いた。
俯き泣いているところを、後ろからギュッと抱きしめられる。
「…ごめん…」
嗅ぎ慣れた悟さんの香り。
艶のある声。
「…分かってる…」
どんなに意見が食い違っても、私から離れないで。
貴方の全部が大好きなの。
この腕も声も温もりも。
私には必要なの。
「…君を死なせたくないんだ…」
悟さんも同じ気持ちだって分かってる。
でもお腹にいるこの子を、私や悟さんのいる世界に迎えてあげたい。
それを諦めることは出来ないの。
「…私は死なない…」
この子も失いたくない。
「そろそろ部屋に戻ろうか?」
「うん」
抱き上げられて、悟さんに掴まる。
そのまま部屋に連れて行かれた。
悟さんの膝にもたれて横になる。
「名前は強いね」
「えっ?」
「もうくたくただろ?それでも諦めない。脱帽だよ」
「そりゃ愛してるもん。頑張れるよ」
髪を撫でられて微睡む。
愛することの意味を教えてくれたのは、他の誰でもない。
悟さんなんだよ。