第2章 空虚に絵を描く/ジェ監
ジェイドはやっぱり兄弟の言っていることが分からなかった。
「ジェイド先輩っ!」
少女はちゃんとそこにいるし、笑顔を向けて名を呼んでくれるのだ。
ジェイドは穏やかに微笑んだ。あの頃と変わらずに少女が幸せそうに笑っている。
「今日の晩ご飯、ミルクスープにしませんか?私、ジェイド先輩が作ってくださるミルクスープが大好きなんです」
世界はあの頃よりも随分と変わってしまった。
そんな世界の中で、ジェイドだけがあの頃と変わらぬ温かな記憶だけを頼りにして、幸せを描き続けていた。
- fin -