第3章 仮初の夫婦生活
手を差し出しながらそう言うと、
真琴が目を真ん丸にした。
そして、一瞬揺れた、黒い瞳。
それに、なんだか違和感を感じて。
ああ、
もしかして余計な事をしてしまっただろうかと
内心冷や汗をかいたら、
突然
「あっ」
と小さく声を上げた真琴が小走りに窓に近寄って。
レースのカーテンを手際よく外すと、
頭にすっぽり被ってくるりと一回転した。
ふわりと揺れるレースと、
真琴のワンピース。
とんっと足を跳ねさせ、膝を少し曲げた真琴が、
少々照れくさそうに笑った。
「どうだい?花嫁さんみたい?」
「ああ…ベールか。」
「うふふ。そう。少しは雰囲気出るでしょう?」
というわけで、はい!はめてくれたまえ!
っと、そこまでしたくせに
ムードも何もなく差し出された左手。
なんだか、
それがおかしくて苦笑いを零しながら。
俺は、その細くて頼りない綺麗な手に、
そっと指輪をはめた。