第3章 仮初の夫婦生活
真琴の隠れ家だという古びた一軒家での生活。
最初の一週間は、
多少警戒して過ごした。
二つ返事で了承したものの。
よくよく考えればあの真琴である。
何かとてつもない嫌がらせを考えているのかもしれないと、
仕事を終えて帰宅するたびに身構えた。
しかし、予想に反し、
毎度真琴はエプロンで手を拭きながら
「おかえり」
と微笑むだけで。
今日はひき肉が安かったからハンバーグにした、
だの。
スーパーの近くに新しいパン屋ができてたから行ってみたい、
だの。
福引で入浴剤を貰ったから使ってみよう、
だの。
そんな他愛もない事を言いながら
俺のコートをハンガーにかける姿は、
まさに新婚の奥さんのようで。
正直、かなり、グッときていた。