第5章 ending ー風に成るー
「なぁ、真琴。」
かさりと、花束の包装紙が音を立てる。
「最期の一ヶ月。お前は幸せだったか?」
そう呟いた瞬間吹いた、風。
危うく帽子を飛ばされかけて、
素早く手で押さえた俺の耳に飛び込んできたのは、
ヒュッという冷たい風の音と。
確かに。
確かに。
『当たり前じゃあないか!ありがとう』
そう云って愉快そうに笑う、あいつの。
「そうか。」
目の奥が、
熱い。
「そうかァ…」
鼻がツンッと痺れて、
唇が無様に震えた。
そうか。
なら良い。
なら良いんだ。
お前が幸せだったのなら、それで。