第5章 ending ー風に成るー
なんだ、ずっと両想いだったんだな。
顔を合わせれば喧嘩、
喧嘩で。
お互い「大嫌い」が口癖みたいな物だったのに、
不思議なモンだな。
本当に、気づきさえしなかった。
でも、好きだと言えなくて、
言わなくて、本当に良かった。
死を目の前に、
そんな強すぎる光を見せたら、
きっと真琴は苦しい断末魔を上げる事になった筈だから。
幸せだったのなら。
それで、
それで。
けれども。
それじゃあ、
俺のこの気持ちはどうすればいいのか。
本気で分からなかった。
誰かに聞いて教えてもらえるのなら、
土下座してでも教示して欲しかった。
胸が押しつぶされそうに痛い。
喉の途中で何か大きな物がつっかかっているのに、
どうやっても吐きだせないような、
苦しさ。
もう、
しっかり立っている事すらできなくて。
苦しくて、
苦しくて、
ただ、
苦しくて。
「真琴…」
膝をつき、唇を落とした墓石。
それは、
太陽の光のせいか、
別れの間際、
真琴の唇に落とした最初で最後のキスよりずっと、
ずっと、
温かくて。
何故だかそれをきっかけに、
だらしなく流れ出した涙が、
ぼたぼたと地面に染みを作る。