第16章 たったひとつの (五条悟)
「あれ〜?恵とじゃん」
『悟?』
「やっほ〜何してるの二人で」
何しにここへ来たんだろうとか、考えるだけ無駄で。理由はがいるから、それだけ。俺と二人きりなんて割って入って来るに決まってる。昔からそうだから。
「が俺に飯作ってくれたんで片付けしてるとこです。」
「ふ〜ん。僕ものご飯食べたい」
『冷蔵庫にまだスープ残ってるよ持ってく?』
「えぇ、僕一人で食べんの?」
『私これから恵くんたちと映画鑑賞だもん。』
分かりやすく機嫌が悪くなるこの人は本当に子供みたいな人だ。自分の気持ちを隠さない。特に俺の前では隠すどころかは自分のものだと刷り込んでくるみたいに彼女に触れる。
『ちょっと悟近い。なに?』
「が恵と二人きりだったから妬いた」
隣に俺がいても関係ない。ピタリとに擦り寄って彼女の顔を覗き込む。アイマスクに人差し指をかけてチラリと片目を出すのはが自分の瞳に弱いのを知っているから。
『それやめて!』
「えーだって僕の目好きじゃん♡」
『分かっててやってるの良くないよ』
「使える武器はなんだって使うよ。それがこの六眼なら尚更。僕にしかないからね。」
「…そろそろ釘崎たち来る」
俺に出来る抵抗はこれくらい。
「まあ、楽しんでよ。青春しておいで。」
ぱっとから離れて俺をみる双瞳はすでにアイマスクに隠れていた。
『じゃあ行くね悟。これ持って帰っていいからね!』
タッパーに入ったスープを先生に手渡して俺の隣に戻ってきたと並んで部屋に戻る。虎杖たちが来るまであと少し。あとほんの少しは2人きり。
『ねえ見て恵くん』
「ん?」
部屋に戻るなり見て、と机の上に置かれたタッパー。
『野菜チップス作ったんだけどこれならきっと野薔薇も食べられるよね。』
「あぁたしかに。ひとつ貰ってもいいか?」
『もちろん』
スライスされた人参のチップスを拾いあげて口に入れる。ほんのり甘くて塩気があってうまい。
「うま。釘崎喜びそうだな。」
『ほんと!よかったあ!』
他人のことばっか考えてるようなやつだけどそんな優しい彼女に惹かれたのは俺だけじゃない。もっと…全部…欲しい。