第16章 たったひとつの (五条悟)
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『野薔薇だ。もしもーし?』
《ごめーん、ちょっと遅れる!伏黒達にも伝えといて!》
『了解だよ、焦らずおいで』
《ありがと、またあとで!》
『野薔薇遅れるって』
「ん、映画は揃ってからだろ?」
『そうだね。あ、恵くんの携帯なってるよ』
「…虎杖だ。」
耳に当てた携帯電話から爆音で虎杖の声が聞こえる。
《もしもし伏黒!ごめん!すこし遅れる!!今日の体術で怪我したとこ家入さんから見せに来いって言われてたのすっかり忘れてた!》
「声でけえよ…了解。んじゃまたあとでな」
《さんきゅ!終わったらすぐ行きますんで!》
「虎杖も遅れてくるって」
『そっか、じゃあ急いでご飯食べることなかったね。』
「まあそのうち来るだろ。」
ベッドに腰掛けて飾ってある写真立てを手にとる。俺の部屋に来ると1度はこうやって写真をながめている。
「いつも見てるよな」
『恵くんと写ってる写真好きなの。私も部屋に飾ろうかな。』
「同じの飾るか?俺データ持ってる」
パソコンに保存してあるデータを2人で並んで見る。あぁこんな事もあったな、って懐かしいものばかりだ。
『これ私が転んで恵くんがおんぶしてくれたやつだ懐かしい』
「大丈夫って言って聞かなかったよな」
『でも結局は恵くんに助けられてるけどね』
そう言って笑うが俺を見て頭を撫でた。
『そばにいてくれてありがとう恵くん』
「こっちのセリフ」
『恵くんがいなかったら…』
「いるから。ずっとそばにいる。」
続く言葉を遮ったのは聞きたくなかったから。俺がいなければ私はいなくなってたかも、彼女の口から何度も聞いた。聞く度に胸が締め付けられた。彼女ががいなきゃ壊れてたのは、優しいに漬け込んでいたのは俺だ。今だって俺は津美紀を理由にして彼女を縛り付けてる。1人にしないでくれと縋っている。
『恵くんの隣は安心する。』
「俺も。…いなくなんないで。」
『うん、そばにいるって約束したからね。』
自然に近づいた距離がゼロになって唇が重なった。俺の恋は叶わないかもしれないけど、それでも誰かに譲るなんてできない。口約束を真に受けて何が悪い。そばにいてくれるって約束したんだ。