第16章 たったひとつの (五条悟)
翌朝、僕の腕に抱かれて眠るの身体には数え切れない程の紅い印が刻まれていた。全部僕がつけたもの。
『…ん、おはよ…』
「おはよう。身体辛くない?」
『……』
無言で睨みつけてくるってことは辛いんだね。嫉妬に任せて抱いちゃった自覚あるからなんも言えないや。
「学校行くのやめて僕とふたりで過ごすっていうのはどう?」
『やだ。』
「どうして?僕とふたりでいよーよ」
『今日は学校終わったら皆で映画見るって約束したの。だからちゃんと行く。』
「…恵と悠仁も?」
胸の辺りがザワザワする。苦しい。
『そりゃあみんなで見るんだからいるよ。』
「そっか。尚更行かせたくないな…だめ?」
楽しそうな計画じゃん。歳相応で、健全で、青春のひとこまってやつ。そう思う気持ちは本当なはずなのに口から出る言葉はどれもを引き止めるものばかり。
『だーめ。じゃあ、準備したら先に出るね。』
「…一緒に行くんじゃだめなの?」
『だめでしょ。私と悟が同じ時間に並んで歩いてたらおかしいよ。』
「恵は知ってるじゃん。悠仁だって野薔薇だって今更僕たちがふたりで仲良く学校いったって何も思わないよ。」
少しでも長くいたいんだよ。
お前の隣は僕だって言いたい。
『補助監督さんとかもいるんだからだめ。皆びっくりしちゃう。それに悟はモテるんだから私なんかと歩いてたら婚期逃すよ』
「それ本気で言ってる?」
『…っ』
「僕が愛してるのはだけだって昨日教えたつもりだったんだけど…足りなかったんだね」
『わ、わかったよ…ごめんね少しからかった、だけ。』
「…それなら許すけど。次僕の気持ち否定するような事言ったらどこにも行けないように閉じ込めちゃうかも。」
『…っ悟が言うと本当ぽいからやめてよね』
「はは、ごめん。」
冗談じゃないんだけどね。
ほんと、閉じ込めて誰にも触れられないところで大事にしたい。僕の、僕だけのになってほしい。