第16章 たったひとつの (五条悟)
丁寧に髪を洗って身体を洗ってちゃぷん、と湯船に浸かる。僕の脚の間にすっぽり収まるの肩に顎をのせて腰を抱き寄せるとゆっくり振り返った。
『近いよ』
「やだ?」
『せっかく広いのに…』
「くっついてたい。離れたくない。」
『どこにもいかないってば』
「でも恵のとこ行ってた。僕すっごい妬いてんの分かってる?」
『何回も言ってるけど私悟の彼女じゃ 「あーあー!聞きたくない!早く僕だけのになってって言ってるのに頷いてくれないのそっちじゃん!」
物心つく頃から僕がずっと傍にいたはずなのに。王子様だって言ってくれたじゃん。僕だけのお姫様になって欲しいって…わがままなの?
『許嫁だって解消されてるんだし私にこだわらなくても…なんか縛ってるみたいで申し訳ないし。』
「え、僕の事縛ってると思ってんの?」
『少なからず…?』
「んー、縛ってんのはどっちかって言うと僕の方じゃない?笑」
『自覚あるんだ』
「だって縛らないとどっか行っちゃうでしょ」
目を離せばすぐにどこかへ飛んでいってしまいそうだから…僕の目の届く範囲にこれからも一生置いておくつもりだよ。
『悟を置いて独りになんかしないよ。』
「分かってる。」
『じゃあなんで、』
「のぬくもりを感じられるくらい近くにいてくれなきゃ不安になる。常に触れてたいんだよ僕は。」
ここにいるって、そう思いたい。
僕の腕の中にいてほしい。離れていかないで、他の人のとこへなんか行かないで。僕だけを見て。
『悟は付き合ったら重そうだね』
「そりゃあこんだけ好きにさせた責任とってもらわないと。」
『え、私の事好きなの』
今までにないくらい目を見開いたが僕を瞳に映す。え、なんで今更?知ってたよね?