第16章 たったひとつの (五条悟)
目の前に立って真っ直ぐ僕を見つめるはまだ靴を履いたままいる。
「とりあえず靴脱ぎなよ。」
彼女の手をとってこちらに引くと優しく振りほどかれる。
『…今日は帰ろうかな。』
「え、なんで」
『だって悟いま私といても楽しくないでしょ』
「そんなことない。僕は今日と一緒に過ごすために頑張ったんだよ。だから帰るなんて言わないで。」
『でも…』
「それにね、僕の好きな物たくさん用意したよ。お風呂も一緒に入ろ?全部僕がしてあげるから。ね?」
だから恵のところになんか行かないで。僕にはだけだよ。独りにしないで。
『私悟に甘えてばかりじゃない…?』
「だめなの?」
『だめになりそう』
「ダメになったっていいじゃん。僕が何でもしてあげる。ずっと僕といれば問題ないでしょ?」
『…そう、なのかな。』
「そうだよ。ほらもうお風呂いこ。」
の未来に僕がいないなんて絶対嫌だ。そんなこと考える時間さえないくらい僕のことでいっぱいになればいい。
靴をぬがせて手を引いてバスルームヘ直行する。されるがままのは珍しい。いつもなら少なからず抵抗してくるのに。
「僕も一緒に入っていい?」
『いーよ。ダメって言っても入るんでしょ。』
「うん、入る。」
『お風呂沸かしておいてくれたんだね。ありがとう。』
「の好きなミルク系のバスソルトもいれたよ。偉い?」
『ほんとだ、私の好きな匂い。』
「ねえ、僕偉い?なでて?」
『よしよし〜』
「ふふ、僕のことこんな風にできるのはお前だけだよ」
さっきまで嫉妬で狂いそうだったのにあっという間に絆されてる僕ってなんて簡単なんだろ。