第16章 たったひとつの (五条悟)
『私は…』
「うん」
『私は悟お兄ちゃんと一緒にいられる所にいたい…っ1人は嫌だ……ッ』
「約束する。1人なんかにしない。俺がを守るから…寂しい思いなんてもうしなくていい。」
堪えていた涙をぽろぽろ零しながら そばにいて と繰り返すはもう俺の許嫁なんかじゃない。それでも守りたいと思ったんだ。この子の未来をどうか明るいものにしたいと思った。
この子の瞳が映す世界が少しでも綺麗なものであればいいと思った。
「…ひとつ、聞いてもいいか?」
『…なあに?』
「嫌なこと思い出させちまうけど。」
『いいよ。』
「母ちゃんも父ちゃんもあんな状態までやられたのに、は怪我一つしなかったのか?」
『うん、私はどこも怪我してないよ』
見えなかったとはいえ大人2人が死に至るほどの致命傷を負わされているのに5歳の少女が無傷なんてことあんのか…?
「…呪霊はどこに消えたんだ?」
『じゅれ、い?』
「母ちゃんたちを襲ったバケモンみたいなのいたろ?」
『それは真っ黒なヘビさんが食べてくれたの。』
「へび?どっから出てきたか分かる?」
『私の足元からぶわあって。』
俺が駆けつけた時にはもう呪霊は消えていて、むしろ誰かが討伐したあとみたいだった。まさかが…式神使い?
「その蛇、見たのはじめて?」
『ううん。悟お兄ちゃんと出会うちょっと前くらいから一緒だよ。』
「が創りだしたの?」
『つく…?うーん…夜も一緒にいられるお友達が欲しいって思ったら出てきてくれたの。』
「夜も一緒って?」
『だって幼稚園のお友達とは夜まで一緒にいられないでしょ?もっと遊びたかったから…でもヘビさん悪い子じゃないんだよ。いつも守ってくれるの。』
この子は無意識のうちに式神を創りだしたのか。それに両親を襲った呪霊の階級はおそらく3級以上。それを祓ったも3級以上…ってことになる。