第16章 たったひとつの (五条悟)
硝子のシャツをワンピースみたいにして着せてもらったはすっかり硝子に懐いていて自分からぎゅうっと手を握っている。
「俺より硝子の方が良くなっちゃった?」
「女子同士のほうが良いに決まってるだろ」
「〜このお姉さん顔は可愛いけど悪者だからこっちおいで〜」
「は?」
「ほら、怖いでしょ」
『硝子さん悪者なの…?』
不安げに揺れる瞳が硝子を見上げて問う。
「どっちかって言うとこの白髪頭が悪者かな。私はちゃんの味方よ。」
「こらこら彼女の前で言い合いはやめないか。はぁ…私は夏油傑だよ。こんにちはちゃん」
の目線の高さまで屈んで胡散臭い笑顔を見せる傑はいかにも詐欺師みたいだ。
『…こんちには傑さん』
「お腹は空いているかい?」
『ううん…大丈夫です。』
あんなものを見てお腹なんて空くわけがないか。最悪しばらくは何も食べられないかもしれない。
「ごめん、少し2人にしてもらえる?」
「ん、じゃあちゃんまたあとでね」
『またね硝子さん』
「ちゃん私の名前も呼んでくれるかい?」
『傑さんもまたね』
「またね〜」
2人が出ていった部屋で向かい合わせに座って視線を合わせる。その瞳はまだ揺れていて今にも涙がこぼれ落ちそうだ。
「、なんで俺の事呼んでくれたの?」
『…何かあったら助けに来てくれるって言ってくれたから…落ちてたお母さんの携帯から悟お兄ちゃんに電話かけたの…。』
「そっか。俺のこと呼んでくれてありがと。1人でよく頑張った。怖かったな…ここは安全だからもう安心していい。」
まだ5歳の少女が目の前で両親を呪霊に殺されるなんてなんの悪夢だよ。が何をしたっていうんだ。
『悟お兄ちゃん…』
「うん?」
『私はこれからどうなるの…?』
「多分ここで過ごすことになると思うけど、はどうしたい?」
家だってあんな状態だったし、戻れないと思う。それにこんな小さな女の子1人で生きていけるほど呪術界は甘くない。