第16章 たったひとつの (五条悟)
お母さんって叫ぶを抱きかかえて俺は高専に飛んだ。
「悟!急に飛び出していくから何かと思ったじゃないか…!」
「その子血だらけじゃん!早くこっちに運んで!」
硝子のあとをついてまだ震えてる小さな体をベッドに優しくおろす。俺の手を握ったまま泣きじゃくるを俺が守らないとって。この子にはもう俺しかいないから。
「…君、どこか怪我してるところある?痛むところは?」
硝子の問いかけにふるふると頭を横にふる。
「じゃあこの血は君のじゃ無いんだね。そしたら…お姉さんとお風呂入りに行こっか。」
自分のではないのなら尚更、一刻も早くこの血液を洗い流した方がいいとの手を引いて硝子は部屋を出ていった。
「悟…あの子が例の子かい?」
「あーうん。俺の元…許嫁。」
「あんな小さな子…何があったんだ」
「俺の携帯に電話が1本入ったの覚えてるか?」
「あぁ。その電話を受けるなり血相変えて飛び出して行ったからね…驚いたよ。」
何かあったら王子様が助けに行くよ、なんて言って俺の携帯番号を渡していて良かった。電話なんて一度もかかってきた事がなかったから珍しくてワンコールもせずに出たんだ。
《さと、る…おに、ちゃん…っ》
「もしも〜し、どしたの?俺今学校だから後でかけ直してもいいかな?」
《お父さんとお母さん…血まみれで…っそれで、お家も血まみれで…っ》
「…すぐ行く」
震える声は驚くほど動揺していて、今にも泣き出しそうだった。そんなのは初めてで只事じゃないのは一目瞭然。
説明もせず飛び出して行った俺を呼ぶ傑の声も無視しての家に向かった。