第16章 たったひとつの (五条悟)
真っ黒なアイマスクを外した悟の瞳は"蒼"と一言では言い表せないほどに綺麗でガラス玉なんかよりずっと透き通ってる。
「なぁにそんなに見つめて。やーっと惚れてくれたの?」
わざと前髪をかきあげた彼は何度見ても息を飲むほどに整った顔を見せつけてくる。
『悟の目、綺麗だね』
「そーお?見えすぎて僕は好きじゃない。でもが綺麗って言ってくれるなら好き。」
『綺麗だよ。』
そばに立っていた私の腰に腕を回してぴたりと抱き寄せられる。
「出会って1番最初に僕に言ってくれた言葉もそれだったよね。」
『そうだったかな』
「そうだよ。お兄ちゃんの目青くて綺麗ね、王子様みたいって。嬉しかったからよく覚えてる。」
初めて会ったのは私がまだ4歳のとき。五条家と長い付き合いのあった私の母方の祖母の家系は言わずもがな呪力で人間を測るような人種が多かった。
呪力の無かった母は高校卒業と同時に破門されたんだって。大学で出会ったお父さんとの間にできた私は覚醒遺伝なのか呪力を持って生まれた。お母さんは戸惑っていたけど、そんなことは関係ないと溢れんばかりの愛情で育ててくれた。
どこからバレたのか祖母は私の存在と呪力持ちということを知って五条家へのご挨拶とやらに無理やり連れて行かれた。
そこで初めて悟と出会った。
まだ高校生だった悟と。
思い返せば確かに言ったのかもしれない。こんなに綺麗な瞳の人間なんてそうそういないし、おまけに顔もいい。4歳の私にはきっと衝撃だった。
なんとしても五条家と深い繋がりが欲しかった祖母は悟の許嫁として私を連れていったんだって。そんなこと小さすぎた私には知る由もなかったけど。
12も年の離れた私の事なんてそんな対象に見れないだろうに可哀想だなって後々思ったのを覚えてる。
「ね、言ってたでしょ?」
『え?』
「昔のこと思い出してたんじゃなかったの?」
『あーうん。言ったかもなあって。』
「ぜーったい言ってた。背伸びして俺の目覗き込んでさ〜可愛かったなあ♡あのとき4歳とかでしょ?」
『そうだね、悟が高校1年生だったから。』
悟との関係が変わったのはいつからだったろうか。