第16章 たったひとつの (五条悟)
『そうだ、美味しそうなお菓子貰ったの。食べる?』
「女子ってこの時間のお菓子気にすんじゃねーの?」
『食べたい時に食べたいの〜』
「んじゃ食う〜」
若干緊張状態だった悠仁くんがやっとリラックスしてきた頃、いただきもののお菓子がある事を思い出した。
「なにこれうまそう」
『ほんとはお酒のおつまみらしいんだけど好きそうだからって七海さんがくれたの』
「へえ、ナナミンから」
『七海さんのことナナミンって呼ぶの悠仁くんくらいだよ笑』
「五条先生が呼んだら無視してたもんな〜笑」
悠仁くんは天性の明るさと人に好かれるなにかをもってる。そばにいると私まで元気になれる。だから七海さんも気を許してるんだと思う。
おつまみに伸ばした手に悠仁くんの手が触れた。
『あ、ごめんね』
「わりい!」
勢いよく引っ込めた彼の手を好奇心で追いかけて握ってみた。
「…へ?」
『いや、そんな避けなくても…って思って。』
「いや!避けてるわけじゃなくて!えっと…俺…っは!」
『うん?』
悠仁くんの手を握っていたはずなのに気づけば私のほうが手を握られていた。
「昨日の夜は順序間違えちまったけど。俺はのことが…っ 「いるー???」
バン!とノックもなしに開いたドア。見なくても分かる。こんな無礼者は1人しかいない。
「ちょっと〜カギくらいかけなって!僕いつも言ってるよね〜?」
『……はあ。』
「ごじょーせんせ…?」
「あっれぇ〜悠仁じゃん!なになに、いいとこだった?ごっめ〜ん!んじゃ借りてくね!」
「んぇ!?」
目にも止まらぬ早さで回収されてあっという間に五条先生の自宅へと連れてこられた。
『…先生今何時だと思って…んは、ぁ…ッ』
噛み付くような口付けに理解が追いつかない。
「2人きりのときは?」
『さとる…今何時だと思ってるの』
「だってが悠仁といるから僕妬いちゃってさ。それに手まで握られてた。こんな時間に男を部屋にあげたらダメだよ。」
『どの口が…』
「ん〜?この口だけど、ちゅーする?」
『しない』
悠仁くんと一緒にいたことをなんで知ってるんだろうとか、そんなことは考えてもきっと無駄。五条悟だから…ただそれだけ。