第15章 青の日々 (及川徹)
『人、全然いないね。』
「ほんとだね。俺たちだけだ。」
キョロキョロと辺りを見回して視線を前に戻してから『花火大会なのに不思議な気持ち』って。
『ここ来たことあるの…?』
「あ…いや、かっこ悪いんだけどまっつんが教えてくれて…。女の子と2人で花火なんて初めてだよ。」
『なんだ、そうだったの。』
「なんかほっとしてる…?」
『うん。及川のはじめて取り〜、なんてね』
え、なに、やば…心臓いったい。
こんなの聞いてない…無理かも。
『ちょっとなんか言ってよ…』
「好き…」
『え?』
「もう無理。好き。大好きです。」
やば、どうしよ。溢れて止まんない。
好きで好きでどうしようもないんだよ…。
『及川…?』
《まもなく花火が打ち上がります!
それではカウントをご一緒に!》
《5》
《4》
《3》
《2》
・
・
・
《1》
「俺の彼女になってくれませんか」
ドーーーーーン!!!
打ち上がった花火がちゃんの顔を照らす。うっすら濡れた大きな瞳が俺を映して揺れている。
『でも私には…』
彼氏はいらない。
分かってる。それで振られてるし。
「手洗いに行った時、ちゃんと付き合ってるのかって聞かれて そうだよって言えないのが悔しかった。俺の彼女に手出すなって言えなくて…悔しかった。」
『別に及川が気負うことじゃないよ』
「それでもだよ。俺はちゃんの1番頼れる存在でありたい。もっと一緒にいたいし触れたいって思う。彼氏になりたい。」
叶わなくてもいいなんてかっこつけておいて、好きすぎてどうしようもない。誰よりもそばにいさせて欲しい。
『私結構わがまただよ』
「え?全然、いい…です」
思いもよらない返答に言葉が詰まる。
『嫉妬もするかも』
「むしろ嬉しいくらいだよ」
『及川より先に死ぬ、かもよ…』
「もしそうなっても最期までそばにいるよ」
最後の最期の瞬間までそばにいさせて。
俺といて幸せだったって言わせるから。
『……る、』
「え?」
『及川の…彼女になる━━━』
「え、え…ほんとに…?」
『うん。待たせてごめん。』
「うそ…泣きそう…」
ほんとに泣きそう。
ちゃんが俺の彼女…?
夢なら醒めないで。