第15章 青の日々 (及川徹)
少しの沈黙。
手を洗って口元も拭って、岩泉たちの待つベンチへと二人で足を向ける。
「うわ、さっきより列伸びてるね〜。」
先に口を開いたのは及川だった
『ごめん及川…巻き込んで。』
「なんでよ。不謹慎かもだけどむしろ嬉しいくらいだよ。」
『…え?』
及川を見上げると眉を下げて笑っていた。
「俺はね、ちゃんのことなら何でも知りたいし何でも巻き込んで欲しい。それが辛いことなら俺に守らせて欲しい。苦しいなら一緒に背負いたい。」
『…でも、及川に迷惑はかけられないよ』
優しい及川に甘えてばかりじゃいけない。
この人にはバレーボールがある。
間違ってもそれを彼から奪っちゃいけない。
もう傍にはいられないかも…なんて考えてこんなに胸が痛むのは私が及川を好きだから。
「ちゃんにかけられる迷惑なんて俺からしたらご褒美だよ!」
『何言って…』
「ほんとだよ。だから離れていこうとしないで。」
まるで見透かされたようなその言葉。
悲しそうに笑う及川が私に手を伸ばす。
『…?』
「手、洗ったから繋げるかなって。俺は別にちゃんの手がベタベタでも良かったんだけど。」
あ…さっきそれが理由で断ったからか。
『でも松川くんたちにからかわれるよ…?』
「俺がちゃんのこと好きなの本当だからそんなの気にしない。だめ?」
及川はずるい。自分のビジュアルの良さをよく分かってる。そんな顔で聞かれたら頷きそうになる。
「…っ好きでもない男と手繋ぐの嫌だよね、ごめん」
『繋ぐ。』
「え?」
『嫌ならいい。』
「やなわけない!繋いでくれるの!?」
ほんとに嬉しそうに私の手をとって握る。
「わあ…っ手小さいかぁわいい!」
『及川のは大きいね』
「…っえ?なに?」
ピシッと固まった及川が聞き返す。
『及川の大きいねって…?』
「う、いや…っ待って分かってる大丈夫!」
え、なに…私何かまずいこと言った…?
「俺の手ね。うん。手。」
『手の話…してたよね?』
「してました!大丈夫分かってる…っ!」
『皆のとこ着く前に離しとく?』
「え、やだ…って言ったら繋いでてくれマスカ…」
『さっき助けてもらったしこれくらい聞きますよ』
「ありがとうございます!!」
こんなんじゃ全然足りないんだけどね。