第15章 青の日々 (及川徹)
「及川くんもこの子に騙されてるの?」
「はい?」
「色んな男に色目使ってるよこの子。私たちの学年のバスケ部のキャプテンだって寝とったんじゃないかって噂まわってるし〜それが原因で彼女と別れてるんだよ?」
俯いたままのちゃんが涙をこらえてる。何、その噂。そんなこと誰が言ってんの。いや、この人たちが流してるんだろうけどね。酷すぎる。
「及川くん騙されてるよ、一緒にいない方がいいよ?」
「俺の一目惚れなんで。何も知らないくせにちゃんのこと悪く言わないでもらっていいですか。」
「…え?」
「バスケ部のキャプテンさんもちゃんに告白するまでは話したことなかったみたいですけどね。」
「そんなの分かんないじゃん!」
「分かります。ちゃんのことずっと見てきたので。男の影なんてあろうもんなら俺が片っ端から潰してます。」
少し目を離しただけで声掛けられちゃうちゃんに悪い虫がつかないようにしてた俺の努力をなんだと思ってるの。
「及川くん…この子と付き合ってるの?」
「まだ…です。俺の片想いなので。」
悔しい。俺がちゃんの彼氏ですって言えるようになりたい。彼氏ならこういうときもっと…もっとちゃんと守れるんじゃないのかって考えるだけで本当に悔しい。
「思わせぶりされてるだけじゃない?たくさんいるキープのうちの1人かもしれないよ?いいの??」
「思わせぶりしてほしいくらいですけどね。もう何回もフラれてますから。それでも好きでいさせてってお願いしてるのは俺の方なので。」
付き合えない、とはっきり言われてる。
それでも諦めないのは俺の方。
「少し顔が可愛いだけでしょこの子…」
ぼそっと呟いたその言葉にぷつり、と俺の中の何かが切れた。
「…っ二度とちゃんに近づくな。」
「でも及川くん…っ」
「次俺の好きな人を傷つけたら許さないですから。」
「な、なんなの…っ」
ちゃんに向かって舌打ちをして人混みへ消えていったけど追いかけて一発食らわせてやりたいくらいに腹が立ってる。許せない。だけど追いかけないのはちゃんがまだ震えてるから。