第15章 青の日々 (及川徹)
まっつんをちゃんから離して警戒してる横で岩ちゃんの気配を感じる。
『ありがと岩泉』
そう言って岩ちゃんの持つ綿あめに口をつけてる。
「なぁ、前来た時もこれ食ってなかった?」
『うん、好きなの。』
「甘すぎねー?」
『こういう時にしか食べれないから来たら食べちゃう』
相手が岩ちゃんでも妬けちゃうなあ。俺が買いに行ってたら俺の手から食べてくれたのかな、とか考えちゃうよ。でも2人きりにしてくれたしなあ。
岩ちゃんの言う、前に来たってのは2年前。岩ちゃんとちゃんと3人で。2人で行きたかったけど、断られるのが怖くて岩ちゃんも誘ったんだよね。
「岩ちゃん俺にもあーんしてっ」
「きめぇ自分で食え」
「ちぇー」
ぐっと綿あめを押し付けられて渋々自分で持つ。岩ちゃんも大概ちゃんに甘いと思う。女の子絡みなんてほとんど無い岩ちゃんだから最初は戸惑ってたけど俺より先に仲良くなってたもんなあ。
「おい髪の毛食ってんぞ」
『ん、ありがと』
顔の横で緩く巻かれたひと束の髪を優しく耳にかけてあげる岩ちゃんは前にちゃんのことを手のかかる妹みたいだと言ってた。
だけどちゃんは?
岩ちゃんのことどう思ってる?
言葉は足りなくとも頼りがいがあって、ついて行きたくなるような男も惚れる漢だよね岩ちゃんは。誰よりも岩ちゃんの良さを知ってるのは俺だからちゃんの気持ちが岩ちゃんに向くかもしれないって不安に思ってしまう。
高いところのものが取れなかった時、俺の方が身長高いのに岩ちゃんのことを頼ってた。ペットボトルの蓋が開かなかった時、重くて荷物を持ちきれなかった時、俺だって男なのに岩ちゃんを真っ先に頼ってた。
さり気ない優しさでいつもちゃんを見守ってる。俺が女の子だったら惚れてたかも、なんて考え出すと泣きそうになる。
「おい、お前今なんか余計なこと考えてるだろ」
「え、?」
「俺に隠し事出来ると思うなボケ」
「んぐっ、痛い!箸刺さってるから!?」
口元に押し付けられた焼きそばを掴む割り箸がぐいぐいと当たって痛い!岩ちゃんてば乱暴!!
「んな心配しなくてもはちゃんとお前のこと見てるから大丈夫だろ。自信持てや。」