第15章 青の日々 (及川徹)
side 及川
たとえ相手が超絶タイプだったとしても恋人は作らないって言うから、恋人が欲しいと思うその時まで誰のものにもならないでって。我ながらすごくすごく強欲な事を言ってしまったなあと思う。
でもちゃんは笑って快諾してくれたし、いい男になるって宣言した俺に待ってるって応えてくれた。
誰のものにもならないっていうのは俺を選ぶこともないのかもしれないけど、最初の頃に比べたらだいぶ縮まったこの距離をチャンスと思わずにはいられなかったんだ。
「なあ、お前夜どこいってたんだ」
「えっ」
「えっ、て。」
合宿最終日の帰り道。隣を歩く岩ちゃんが思い出したように俺に聞く。
「え、岩ちゃん気づいてたの!?」
「隣に寝てたからな。毎夜どっか行ってんなあとは思ってた。朝になったら戻ってるし練習も支障ねえから別にどうしようってことではねえけど。気になっただけだわ。」
毎日一番最初にぐーぐー寝てるから気づかれてないと思ってたのに…ちゃんとバレてたんですけど!!
「えっとですね…」
「おー」
「ちゃんのところに…」
「そうだったんか。」
「あれ…怒らないの?」
「あ?怒らねえよ別に。それともあれか、怒られるようなことしたんか?」
「し、してません!断じて!」
手は握ったけどもそれは!ちゃんから頼まれただけだし!断る方が失礼だもんね!なんならあの状況で5日間手出してない俺を褒めて!
「あーあと、あいつ体調大丈夫なんか」
「うーん…どうだろう。慣れないこと続きで疲れちゃっただけって言ってたけど。ご飯も食べられてたし。」
見たことの無い薬が気にかかってはいるけどあれは多分見られたくないものだったと思うからまだ岩ちゃんには黙っておこう。
「あいつ飯トレしてんのかってくらい食ってたけど…だいぶ苦しそうだったよな。」
「それは俺も思ってた。」
「人の事頼るの上手くねえからな、は。体調悪くても言わねえとは思ってたけど俺らには言えばいいのにな。」
「そうだね、俺たちが気づいて寄り添ってあげればいいよ。」
「まあ、そうだな。」
甘えることが下手くそなのは岩ちゃんも一緒だけど、そんなこと言ったら蹴られそうだから黙っておこーっと。