第15章 青の日々 (及川徹)
side 及川
手を握っていてほしい、とベッドに潜った彼女が小さな手を伸ばす。こんなの役得すぎるし何時間でも繋いでいられる。
でもこんなお願いをするのはちゃんらしくない。だってまるで存在を確かめるように俺の手を握るんだ。俺はいなくなったりなんかしないのに。ちゃんの隣にいさせて欲しいと願っているのに。
『スー…スー…』
「寝ていても可愛いなんて反則だよ。」
『ん…んぅ、おい…かわ…』
「あれ、起きてたの?」
『…スー』
え、寝言?待って?え、俺の夢見てるの?
待って可愛すぎるよ無理だよ!?
あぁぁぁぁあ好き。
なんっなの!?
2人きりの部屋で好きな子が寝言で俺の名前呼んで手握ってるってさぁ…!手出してない俺ってスゴすぎるのでは!?もう!!!可愛い!!
…はあ、でも行かなきゃ。
明日もあるしね。
「おやすみちゃん。また明日ね。」
名残惜しいけど彼女の頭をふわりと撫でて手を離す。
ガタンッ
「…ったぁ」
電気を消していたせいで足元がよく見えずに机につまづいた。丁寧に畳んで置いてあったちゃんの部活用ジャージが落ちる。
「わわ…っ、ごめんね…っ」
急いで拾い上げると畳まれたジャージの間に透明のケースが見えた。勝手に見てごめんと思いつつ引き出すと種類の違う薬が分けて入れられていて、どれも見たことの無いようなものばかり。
「なに…これ。全部薬…?
やっぱり体調悪いのかな。」
ちゃんは今日ずっと上の空だった。
なれないマネージャー業に体調を崩してしまったのかもしれない。明日はもっと注意して見ててあげなきゃ…。岩ちゃんにも一応伝えとこう。