第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
side you
今日の部活は体育館に一番乗りだった。
角名くんが準備を手伝ってくれて、いつもよりスムーズにスクイズの準備ができた。
まずは3年生の先輩の分から。
氷の量、粉の量、それぞれ違う好みを最近は何も見ずに用意出来るようになった。北さんは規定の量。赤木さんは粉が多め。尾白さんは氷が多め。
3年生の分を作り終わって2年生の分。
一番最初に手に取ったのは角名くんのボトル。角名くんは少し薄めのが好き。中学生の頃から変わってないなぁ…なんて思わず口元が綻んでしまう。
治くんのボトルに手をかけたと同時に嗅いだことある香水の匂いが鼻をついた。私これ…苦手かも…。
「ねえ、ちょっといい?」
手元に向けていた視線をあげると買い出しの途中に電車で会った人達が立っていて、これはきっと良くないことだろうなって私でも理解ができた。
『…えと、これから部活なので少しなら』
「角名の周りうろちょろしてて迷惑なんだけど。はっきり言って邪魔。」
『…でもクラスと部活が一緒で…』
「登下校も一緒にしてるじゃん!」
『それはお家が近くて…っ』
「だから何?バラバラで来るのってそんな難しい?角名のジャージなんて着て見せびらかしてさぁ…角名があんたと付き合ってるかもなんて噂たったら迷惑かけると思わないの?」
めい…わく。
そうか、迷惑になっちゃうのか…。
角名くんはモテるから…私なんかがそばに居ると素敵な出会いを逃すかもしれない。そりゃあ迷惑だよね。
「聞いてんのかよ!!!!」
考え込んで俯いていた私の視界に入ってきた手に はたかれて治くんのボトルを床に落としてしまった。
『…っ』
「あんたが作ったドリンクなんて誰が飲むのよ」
水道に置いていたボトルを全部なぎ倒すように床に放られた。仕舞いには角名くんのジャージを脱げと引っ張られる。
「これも脱いで今すぐ!!」
『ま…って引っ張るのはやめて…っ』
「あんたなんかが着ていいジャージじゃないんだからさっさと脱いで!!」
剥がされるように奪われた角名くんのジャージも床に落ちて目の前にはスクイズとジャージが散らばっている。