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今宵は誰の腕の中で眠りますか⋯?

第14章 初恋の君と (角名倫太郎)



朝から降る雨はこの時間になってもまだ降り続いていた。駅を出て傘を差すといつもより傘分の距離があいてもどかしい。いつも触れるほどの距離で彼女の隣を歩いているから少し寂しくなる。

『角名くん今日は…あの。ありがとう。』

「え、いや、全然だよ。」

『いつも助けられてばっかりだ…』

そう言って前髪を触るちゃん。
ちらりと見えた手首に薄らと赤い痕が見える。

「…ねえ」

『うん?』

「手首、どうしたの」

『…っなんでも、ないよ』

さりげなく隠すような仕草に今日あったことを思い返す。原因はきっと部活前の…。

「ごめんちゃん…ちゃんと聞かせてくれるまで帰せない。」

戸惑う彼女の手を引いて足早に俺の家に向かう。帰るはずだった自分のマンションを通り過ぎてひとつ隣りの建物に引きずり込まれるように連れてこられたのに何も言わずに着いてきてくれた。

『お邪魔…します。』

「荷物適当に置いてね。飲み物持ってくる。」

飲み物を持って戻っても荷物を手に立ったままいた彼女。その手からバッグを受け取ってソファ座らせる。

「ちゃん。」

『はい。』

「この痕…どうしたの。昼は無かったよね?」

『これは…』

また隠そうとする腕を掴んで優しく撫でると今にも泣き出しそうに瞳が揺れた。

「アイツらにやられた?ねえお願いだから正直に話して。」

『角名くんに迷惑かけられないよ…』

「迷惑なんかじゃないから。ちゃんのこと守りたい。お願いだから…話してほしい。」

『わか…った。』

観念したようにつぐんでいた唇をひらいてぽつりぽつりと話してくれた。
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