第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
苛立ちからか勢いよく捻った蛇口からでた水が跳ねる。自分たちのボトルの口元を水でゆすぐだけの作業。中身は入ってるものと入ってないものがあるみたいで、ドリンク作ってる途中に何かされたんだろうな…なんて冷静に考えてる俺がいる。
隣で先輩たちのスクイズを洗うちゃんは後ろに立つ女たちが気になるのかソワソワとしていて同じボトルをずっと洗ってる。
「ギンのやつって粉どんくらい?」
『あ、えっと銀島くんのは規定の量で大丈夫』
「おっけ。侑は?」
『侑くんは氷多めで粉も少し多め。』
「はあい。あ、俺のはもう入ってる。ありがと。」
『あ…私ひとりでやるから大丈夫…だよ?角名くん先に体育館いたほうが…っ』
「まだ誰も来てないから大丈夫。それに一緒にいたい。だめ?」
『だめとかじゃ…ないけど。』
「良かった。ほらジャージもちゃんと着て、ね?」
小脇に抱えたままいる俺のジャージを着せてチャックを閉める。作業がしやすいように袖をまくると見える白い肌。
『あの…これもう…角名くんの着れない…っ』
「え、なんで?」
チャックにかけた彼女の手を掴んで瞳を覗き込めばうすらと潤んで揺れていた。
「こいつらになんか言われた?」
『……っ』
「え〜私たち何も言ってないよねぇちゃん?仲良く話してただけじゃん電車で会ったぶりだねって。ねえ??」
「俺ちゃんに聞いてんだけど。あんたたちからは何も聞きたくない。」
「な、なんでそんな言い方…っ」
1歩近づいてきた女たちから庇うように彼女を背に隠してから向き直す。
『ぇと…ずっと借りてるのも悪いし…角名くんの彼女って周りに思われたら迷惑かけちゃうから…だから…』
「そんなの思わせとけばいいじゃん。それに着てって頼んでるの俺ね?ちゃんは着させられてるだけだから。なんにも心配しなくていいんだよ。」
ここに来た時、俺のジャージも床に落ちてたしきっと剥ぎ取られたんだろうな。何を言われたのか、されたのか知らないけど泣きそうになるほどのことだったってことは分かる。朝から色々ほんとさ…やめてよね。