第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
放課後、着替える手間がなくなった俺たちは一番乗りで体育館についた。
「お、1番だ。」
『1番乗りはじめてだ〜』
初めてとはしゃぎながら監督が座る様の椅子を出したり、スクイズの入ったカゴを持ってきたりしている。
「ちゃんこれからドリンク作りに行くの?」
『うん、ビブス出したら行くよ!』
「じゃあビブス俺が出しとくからドリンク先に行ってて?追いかけるから。」
『ほんと!助かるありがとう〜』
パタパタと体育館を出て行く後ろ姿を見送って、いつもちゃんが準備してくれてるみたいに俺もビブスを用意する。俺たちの汗だらけになったビブスをちゃんがいなかった時は臭うなーって思ってから洗ってた。でもちゃんが来てからは定期的に短スパンで洗濯してくれるからいつもいい匂いがする。
ドリンクもタオルも取りやすいように置いてくれるしテーピングだって上手い。そしてなにより北さんを味方につけている。ちゃんが来てから俺らの部内環境が向上しすぎてるよ。ほんとに助かってる。あと可愛い。スゴく可愛い。
ビブスを置いて冷水機へ向かう途中わりとデカめの音がした。何今の…スクイズの落ちた音……?
走って彼女のいる場所に向かうとスクイズと俺のジャージが床に散らばっていた。
「え、なに…これ」
『…っす、なく 「あ!角名ぁ♡」
甘ったるい声と甘ったるい香水の匂い。買い出しに出かけた俺らに電車で絡んできた女たちがちゃんの目の前に立ってて、こんなのまるで…。
「ちゃん大丈夫?」
『あ…えっとごめんねすぐ拾うから…っ』
「俺も手伝うよ」
彼女がしゃがんで1番初めに拾ったのは俺のジャージだった。きゅんと心臓を掴まれたのも束の間、微かに震える声は涙を堪えているようで俺まで辛くなる。
「ねぇ角名ぁ〜♡今日上で見てるね?」
「スクイズ一応口元のところ洗おうか。俺自分たちのやるからちゃん北さんたちのお願いしていい?」
『あ…うん。あの、でも角名くん…にお話があるみたいで…っ』
「俺は無い。ほら部活始まるから急ご。」
ちゃんを傷つける奴なんか顔も見たくない。口なんか聞きたくない。お願いだから俺の前から消えてよ。