第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
「たのもーーー!!!」
バンッと勢いよく開いた扉の前に立つ侑。
「うるさ…」
「えっなんでジャージなん2人とも。ちゃんまた角名のジャージ着せられとるやん。」
ちゃんを見つけるなり可哀想に、と余計なことしか言わない侑は今度1回懲らしめないといけない。
「何しにきたんツム」
「教科書かしてやサム」
「なんの」
「現国」
「ロッカーにあるから勝手に取ってええよ」
自分のクラスみたいに入ってきて治のロッカーを漁る侑。ゴソゴソしだして1分くらい経った。そんな見つからないことある?
「…ないで」
「ほんま?じゃあないわ」
すまん、と申し訳なさの欠片もない謝罪をする治。それを聞いて自分のロッカーから教科書を1冊持ってきたちゃんが侑にそれを差し出す。
『侑くん、私ので良ければどーぞ』
「え、ほんまに!?ありがとうー!終わったら返しに 「だめ!」」
受け取ろうとした侑の手を思い切り叩いたのはほぼほぼ反射。考えるよりも先に手が出ていた。
「いっったああ!ぶつことないやろ角名ァ!こんなとこでブロッカー発揮せんでええねん痛いわ!!」
「ごめん反射で」
『角名くん…?』
「とにかくだめ。俺の貸すからちゃんのはだめ。あと昨日俺の代わりとかいってストーリーにちゃん載せてたの許してないからね。距離も近すぎっていうか触れないで最低。」
「凄い喋るやん。男の嫉妬は醜いで角名」
「は?じゃあ貸さないけど?」
「ええよちゃんに借りるから」
「は?????絶対貸さないからね??」
文句を言いながら俺の教科書を手に帰っていく侑を不思議そうにポカーンと見送るちゃん。お口開いてる…小さいなあ…かぁわいい。
「角名」
「なに?今忙しい」
ちゃんの可愛い瞬間を見るのに忙しいんだよ。見ればわかるでしょ。
「見すぎやで」
「一瞬も逃したくない」
「嫌われんで」
「それは無理」
視線を治に向けると呆れたようなため息をつかれた。だって嫌われたくないじゃん!?ちゃんに嫌われないように、むしろ恋人になりたいんだから。