第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
そのあと警察官のはからいで早めに学校へと向かうことが出来た。隣を歩く彼女にはいつもの笑顔がなくて俺の方が泣きそうになる。
「大丈夫…じゃないよね」
『…巻き込んでごめんね。』
「何言ってんの…あの状況絶対巻き込んでくんなきゃ困る。」
濡れていることに気づいていないのか差している意味のない彼女の傘を奪って俺の傘の中に入れる。
「濡れちゃうからもう少しこっち寄れる?」
『あ…うん。ごめんねありがとう。』
「もう謝っちゃだめ。俺が一緒で良かった。むしろ守れなくてごめん。」
『え、角名くんは守ってくれたよ…っ』
「ううん、もっと早く気づいてればこんなに傷つかなかったでしょ。でも1人じゃなくてほんとに良かったよ。」
もっと早く気づいてたら。
もし立ち位置が俺と逆だったら。
助けて、と言われるまで気が付かなった。
間の前にいるちゃんにドキドキしっぱなしで他のことに目を向けてなかった。
「…そうだ。急に抱きしめたり手握ったりしてごめんね。」
『そんなの…っむしろ角名くんがそばにいるって思えてすごく安心したよ。ありがとう。』
「ほんと…?それなら良かった。」
あとで殴っていいからって結構本気だったんだけどな。安心してくれてたんだ…どうしよう可愛い…。俺不謹慎すぎる…ごめんちゃん。
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「あ!やっと来た!なんで2人ともびしょ濡れなん!?」
教室に入るなり治が俺たちを見てぎょっと目を見開く。
『私のせいなの…角名くん濡れる必要なかったのに。』
「ちゃん平気なん?角名から連絡きたときビックリしたで。」
『うん、角名くんがいてくれたから大丈夫だよ。少し触られたくらいで私が怖がりすぎちゃっただけなの…。』
「そんなことないやろ…角名がおってほんま不幸中の幸いやったな。先生には言うてあるから心配せんといてな。」
『ありがとう……っよし、切り替える!』
「うん、笑った顔が1番可愛い。」
「特別に俺のお気に入りの飴ちゃんあげるで」
『えへへ、ありがと〜っ』
さっきまでの暗い表情が嘘みたいに気合いで切り替える様子に胸が痛む。こういうとき "彼氏" だったらもっと何か…してあげられるんだろうな。俺のは所詮彼氏の "真似事" 。