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今宵は誰の腕の中で眠りますか⋯?

第14章 初恋の君と (角名倫太郎)



「警察だけは…やめてください!!」

「おいちょっと!ちゃんに近づくな!」

警察、というワードに反応した男が立ち上がってちゃんに懇願するように迫る。

「ごめんなさい!ごめんなさい…もう二度としないので!!」

「二度としないとか当たり前なんだけど。二度としないどころか二度とこの子の前に現れんな。」

駅員さんに抑えられて元いた場所に座らされてからもやめてくれと大きな声を出し続けるから隣に座る小さな身体は震えたまま。

「家族が居るんです…!だから警察だけは!!!」

「家族いるのに女子高生に痴漢とか恥ずかしくないんですか。はぁ…すみません早く警察呼んでください。」

左隣に座る彼女の手を右手で繋いで左で背中を優しくさする。俯いたままだけどきっと泣いてる。男の俺には分からないけど、きっとすごく怖かったんだと思う。脚を触られただけっていってもあの満員電車じゃ抵抗もできない。それに背後からだと姿の見えない恐怖だってきっとある。一緒に登校してて良かった。

しばらくしてちゃんの呼吸も落ち着いた頃に警察官が2人来た。

「お姉さん大丈夫?怖かったろうによく頑張ったね。少し話聞かせてもらいたいんだけど話せるかな?」

『…あ、はい。』

いつもより小さな声。
精神的にやられてるのかも…心配だな…。

「相手はこの人で間違いないんだよね?」

『…駅員さんにもお伝えしたんですけどうしろからだったので私は顔を見てなくて。』

「そっか、じゃあお兄さんが捕まえてくれたのかな?」

「はい。写真も撮ったので間違いないと思います。」

差し出したスマホの画面をじっくり見てからサラリーマンと見比べて頷く警察。写真に写っている手元のスーツと目の前の男が着ているスーツの柄が全く一緒であることと、身につけている結婚指輪が一緒であることから見て犯人はこのサラリーマンであるのは間違いないだろうって。

「御協力ありがとうございます。あとは我々に任せてください。2人は学校があるだろうから連絡先だけお聞きしてもいいかな?」

『…はい。』

「彼氏さんもいいかな?」

「ぇあ…っはい」

また彼氏…って言われちゃった。
俺たちって恋人同士に見えるのかな。
こんなときに不謹慎だけど嬉しい、な。
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