第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
驚いて手を引いた男の腕を掴んで次の駅で引きずり下ろす。
「俺は何もしてない!!」
「黙って着いてきてもらっていいですか」
「離せ!離せよ!!!」
「この子の脚触ってましたよね。俺ちゃんと見てるんで。あと写真撮ってますから。」
背が高いとこういうとき上から良く見えて役立つ。
「俺はこれから仕事があるんだよ!!!」
「はい。俺達もこれから学校です。あ、すみません駅員さん。この人痴漢です。」
駅員さんに引き渡してもなお騒ぐ男。
痴漢ほんとにいるんだ…。
ちゃん可愛いもんな…俺だって触れたいの我慢してんのにお前なんかが触ってんじゃねえよクソ。
『…っぐす、っうぅ』
「ちゃんもう大丈夫だよ。あの男は駅員さんにお願いしたからもういないよ。多分話聞かれたりするけど1人でいく?俺も一緒の方がいい?」
『い…っしょがいい…っ』
「ん、一緒がいいね。そばに居るから大丈夫だよ。」
声をかけてくれた駅員さんに案内された部屋に通されると放心状態の男が奥に座っていた。その男を見て呼吸が浅くなる彼女の手を繋ぐ。
『…ごめんね角名くん。』
「大丈夫。俺がいるから大丈夫だよ。」
「まずは捕まえてくれてありがとうね。学校へはもう連絡したかな?」
「あ、はい友達に連絡したんで大丈夫です。」
「君はこの子の彼氏さん?」
「…いえ、友達です。」
彼氏ですって言いたいですけど…!!
「お嬢ちゃん大丈夫?話せるかな?」
『…っはい、』
「君に嫌なことをしたのはこの人で間違いない?」
『後ろを向いていたので顔までは…』
「そっか。お兄さんは顔見たかな?」
「はい、これ触ってたところ写真撮ったんで間違いないと思います。」
上から撮ったけどちゃんと写ってる。
スーツの柄も分かるし。
「ありがとう。そしたら警察呼んで大丈夫かな?」
『…ぁの、そこまでは…』
大事にしたくないのかスカートの裾をきゅっと握って下を向いたままの彼女が口を開く。
「警察に言った方がいいよ。ちゃんがこんなことされて俺が許せないんだけど。」
『でもそんなことしたら…』
こんな時まで他人の事を考える彼女は本当に優しいと思う。けど俺は絶対に許せないからさ。ごめんねだけど警察呼ばせてください。