第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
次の日、目が覚めると体のダルさがなくなっていた。
飲み物が欲しくて冷蔵庫を開けると1番見えやすい段の手前に今日の日付と朝ごはん、の文字が書かれたタッパーが。じゃこと高菜のおにぎりらしく、レンジで温めるよう指示も書かれていた。鶏ムネの入ったサラダまである。ご丁寧にドレッシング別容器に用意してくれてんだけど。
「…うっま。」
いつもは朝ごはんなんて作る時間が無いからプロテインだけで済ませる日もあるし、前日の残り物とかだから…ちゃんなりに栄養とかも考えて準備してくれたんだと思うと嬉しすぎてやばい。てかまじで美味い。なんなの。
朝ごはんを堪能してたらあっという間に家を出る時間。ちゃんに行くって連絡してないけど大丈夫かな…。いつも待ち合わせをしてる時間に彼女の家のエントランス前に行くとちょうど出てきたところだった。
『あれ、もう体調大丈夫なの??』
「うん、ちゃんのおかげで復活した」
『よかったー!あ、朝ごはん気づいた?』
「うん食べてきた。めっちゃ美味かったです、ありがとね」
もう1日たりとも休めないんです俺は。
なぜなら1日休んだだけで北さんに俺の役目を取られてたからです。ほんとありえない。ちゃんと登下校して人混みから守るのは俺の役目。絶対誰にも譲れない!
『今日はいつもより激混みだあ』
朝から降る雨のせいでいつもより人の多いホーム。
「これは結構…ヤバそうだね。俺から離れちゃだめだよ。」
『はいっ』
降りる人はほとんどいないのに乗る人は沢山いる。それに加えて雨の湿気。嫌なことづくし…なのにちゃんが居るだけで全然生きれる。
電車に乗りこんですぐ、向かい合って立っていたちゃんが俺のシャツをきゅっと握りしめた。
「え、は…っどうしたの」
『…っけ、て…』
「え、?」
『た、すけて…すなく、ん…』
助けて…って言った?
彼女の背後に立つサラリーマンが制服から覗く脚を撫でるように触っているのが見えた。
「…あとで殴っていいから許して。」
震える小さな身体を抱き寄せるとシャツを掴んでいた手が少し緩む。