第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
過去回想 (1年前)
震える体。
真っ暗な部屋。
ピロンッ
見ない方がいいって分かってるのに見てしまうのは知りたいから。嘘だって、冗談だって思いたかったから。
《前回の着衣も良かったけどやっぱ俺は全裸派かな〜》
自分の呼吸が乱れていくのが分かる。
嘘なんかじゃ、冗談なんかじゃなかった。
「なにしてんの」
『…っ!!』
後ろからかかった掠れ声に手にしていた彼のスマホを落としてしまった。
「あー…見ちゃった?」
『せん、ぱい…嘘ですよね…?』
「嘘ってなにが?とのハメ撮り友達に流してたこと?」
『…っ、』
「いやぁ、みーんなお前のことオカズにしてるとか堪んなくない?本物を抱けるのは彼氏の俺だけ♡」
『や…っ消してください…いつ、撮ってたんですか…っ』
いつもと違う口調に鳥肌が立つ。怖い。
「いつって、とするときはいつもだよ。ほらあそことか。」
そう言って指さした本棚の中にカメラがあるのに気づく。たまにはって私の家に誘っても頑なに先輩の家に連れ込まれていた意味を知った。この為だったんだ…撮るために私はこの部屋に呼ばれてたんだ。なんで気づかなかったんだろう。
『…っぐす、』
「あ〜泣いちゃった?ごめんねぇ、でもめっちゃ喜んでくれるんだよね。今更やめらんないからさ、ね?仲良いやつにしか流してないから。本当だよ?」
『消して…ください。お願いします…っ』
「んーん、無理かな。あ、別れるって言うならバレー部にばら撒くから。」
『やめて…!!』
「俺も可愛い彼女これ以上他の男に見せたくないからさ、分かるよね?」
『…』
「分かるよね?」
『はい…』
考えたくもない地獄のような日々の始まりは私が気がつくよりずっと前に始まっていたらしくただ毎日泣くことしか出来なかった。
私の異変にいち早く気づいてくれたのは中学校から同じバレー部にいた同い年のチームメイトだった。
「なぁ、最近元気ねえってかクマすげえけど…なんかあった?」
『いや…別に。』
「別にって顔してねえじゃん。1人で抱え込むなって。先輩と付き合ってからおかしいよ。泣きたいなら胸くらい貸してやっけど。」
優しい同級生に縋るように泣いたのはこの日が初めてだった。