第3章 初恋 (佐野万次郎)
会計を終え、ルンルンで戻ってきたと店を出てしばらく歩いていると聞き覚えのある声が俺を呼んだ。
「マイキーくん?」
「お、たけみっちじゃん
ヒナちゃんも、やっほー」
「マイキーくん…もしかして彼女さんすか?」
隣に立っていると俺をお交互に見てから遠慮がちにきかれたけど答えはNo。そうだよって言いたいところだけど。
「いや…『万次郎くんの彼女です〜』」
「えっ」
「あ、やっぱそーなんすね!
いやあ〜お似合いだなーと思ったんすよ!」
『です、よろしくね〜!』
「おい…っ?」
「私、橘日向です!
武道くんがいつもお世話になってます!」
『たけみっちとヒナちゃん!
万次郎くんからよく話聞いてるよ!』
「うす、じゃあマイキーくんまた!
お邪魔して悪かったっす!
さんもまた!」
『うん、ばいばいまたねえ〜!』
たけみっちとヒナちゃんに手を振ってイタズラな笑顔をむけてくる。
『よし、私達も行こうか。
万次郎くんどこか行きたいところある?』
「あ、いや、ないけどさ…」
『けど…?』
「俺の…彼女って…言ったよね?」
都合のいい幻聴だったら恥ずかしい。
だけど確かにそう聞こえた。
『うん、言っちゃった、へへ〜
武道くんとヒナちゃん信じてたねえ!』
「ん…うん。」
嘘だって冗談だって分かってるのにどうしてこんなにも嬉しいんだろう。俺の彼女ですってを友達に紹介することがこんなに幸せな気持ちになるなんて知らなかった。これからもたけみっちには嘘ついてこ…悪い気もするけど…。
『少し早いけど帰ろっか?
夜ご飯の準備しなきゃだし!』
「そうだね、帰ろっか」
『手とか繋いじゃう?』
無邪気に言うから。断れるわけなんてないよ。
「うん…っ。」
プルルルルル
『あれ、エマだ、ごめんちょっと出るね』
「あ、うん」
あぶな…手汗すごいんだけど…
がエマと電話している間に
深呼吸しよう。手も拭いとこ…。